ここでは、利用者も多かろう『ステップアップノート30 古典文法トレーニング』(河合出版)に採録されている長文課題の、品詞分解解答例を掲載する。
なお、以下の二点にご留意いただくものとする。
- 品詞分解例は本サイト主が作成したものであること
- 品詞分解は具合によって(たとえば連語や複合動詞をどう分解するか)解答が異なること
「助動詞(十一)『めり』『らし』・音便」(宇治拾遺物語)の品詞分解例
大問十七(出典:『宇治拾遺物語』)
◎品詞分解(名詞は基本的に非表示。非活用語は基本的に初出のみ。)
昔、晴明が土御門の家に老い白みたる老僧来たり(※1)ぬ。十歳ばかりなる童部二人具したり。晴明、「何ぞの人にておはするぞ」と問へば、「播磨国の者にて候ふ。陰陽師を習はん(※2)志にて候ふ。この道に殊にすぐれておはします由を承りて、少々習ひ参らせんとて参りたりつるなり」といへば、晴明が思ふやう、「この法師はかしこき者にこそあるめれ。我を試みんとて来たる者なり。それにわろく見えてはわろかるべし。この法師少しひきまさぐらん」と思ひて、「供なる童部は、式神を使ひて来たるなめりかし。式神ならば召し隠せ(※3)」と心の中に念じて、袖の内にて印を結びて、ひそかに呪を唱ふ。さて、法師にいふやう、「とく帰り給ひね。後によき日して、習はんとのたまはん事どもは教へ奉らん」といへば、法師、「あら貴」といひて、手を摺りて額に当てて立ち走りぬ。
※1:カ行変格活用「来」+完了存続の助動詞「たり」と解釈しても文脈上は大して支障はないが、「来ている」「来てしまった」とするよりは単純に「来る」と訳せるほうが自然だと判断し、一語の動詞「来たる」を採用した。
※2:「婉曲」で解釈しても理解できない文脈ではないが、「習はん志」=「習はんとする志」として「意志」で解釈する方が訳が自然であると判断した。
※3:「召す」は尊敬語で「お呼びになる」「召しあがる」「お召しになる」などの訳が基本だが、「す」の尊敬語として文脈に依存した訳を当てる場合もある。その一種である「~を取り上げなさる」という形で今回は訳している。
また、敬意の方向については、陰陽師である安倍晴明が「自身の式神を用いて相手の式神を封じる」という場面なので、術者である晴明が自身の式神に頼み込むという形式を採用して「晴明→晴明の式神」としている。
縦書き用データ
上記をより見やすく編集したデータを掲載する。適宜ダウンロードして学習に活用してほしい。
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新規投稿の際に発信している。本サイト下部にリンクがあるので、参照されたい。
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